12/9(月) 応用科学学会シンポジウムで自動運転に関する講演を担当します☆彡(試乗会もあります!来て!)

5-4. 3次元空間上のねじれた2直線の最接近点を求める

やること

皆さんも、3次元空間上のねじれ関係にある2直線の最接近点が求められなくて枕を濡らした夜があるかと思います。私もあります。

問題

次の2直線を最短で結ぶ線分の両端の座標を求めよ。

 直線1 点(-1, 1, 1)を通りベクトル(1, 0, -1)の直線
 直線2 点(0, 3, 2)を通りベクトル(1, 2, -1)の直線

この問題はやってみると途中で「2変数の最適化問題っぽいな…遺伝的アルゴリズムでいけるやん!」と思ってしまうのですが、いくらGA信者でもさすがにそれはまずいという天の声が聞こえましたので、きちんと解析的に解きます。

解析的に解くとは言いましたが、紙とペンでとは言っていませんので、Pythonを使って解きます

参考文献

問題はこちらをそのまま使用させていただきました。感謝申し上げます。

ねじれの位置にある2直線間の最短距離(共通垂線)
定期試験・大学入試対策に特化した解説。直線を媒介変数表示にすると2変数関数の最小問題に帰着する。

Sympyの使い方はこちらにまとまっています。

Python, SymPyの使い方(因数分解、方程式、微分積分など) | note.nkmk.me
SymPyは代数計算(数式処理)を行うPythonのライブラリ。 因数分解したり、方程式(連立方程式)を解いたり、微分積分を計算したりすることができる。 公式サイト: SymPy ここでは、SymPyの基本的な使い方として、 ...

実行環境

WinPython3.6をおすすめしています。

WinPython - Browse /WinPython_3.6/3.6.7.0 at SourceForge.net
Portable Scientific Python 2/3 32/64bit Distribution for Windows

Google Colaboratoryが利用可能です。

Google Colab

pip, import

Sympyという数式処理用のライブラリを用います。中学校や高校で習ったような連立方程式や微分積分を一瞬で解いてくれます。

import numpy as np
import sympy

コードと解説

各点と各ベクトルを次のように表します。

     \begin{equation*} \begin{split} &p = (-1, 1, 1), \; v = (1, 0, -1)\nonumber\\ &q = (0, 3, 2), \;w = (1, 2, -1) \end{split} \end{equation*}

数式1を「変数 s によって動く点 P の集合」として表現します。同様に、数式2は変数 t を使って点 Q の集合として表現します。

     \begin{equation*} \begin{split} P &= (p_0 + sv_0, p_1 + sv_1, p_2 + sv_2)\nonumber\\ &= (-1 + 1s, 1 + 0s, 1 - 1s) \end{split} \end{equation*}

     \begin{equation*} \begin{split} Q &= (q_0 + tw_0, q_1 + tw_1, q_2 + tw_2)\nonumber\\ &= (0 + 1s, 3 + 2s, 2 - 1s) \end{split} \end{equation*}

#直線1を表す点とベクトル
p = np.array([-1, 1, 1])
v = np.array([1, 0, -1])

#直線2を表す点とベクトル
q = np.array([0, 3, 2])
w = np.array([1, 2, -1])

#変数s, tを用意
s = sympy.Symbol('s')
t = sympy.Symbol('t') #ここからs, tは通常の変数ではなく記号として扱う

"""
直線1を成す点Pの座標は次の通り
    (x, y, z) = (p[0]+s*v[0], p[1]+s*v[1], p[2]+s*v[2])
直線2を成す点Qの座標は次の通り
    (x, y, z) = (q[0]+t*w[0], q[1]+r*w[1], q[2]+r*w[2])
"""

点 P のと点 Q の距離を表します。ただし処理を楽にするため、距離の2乗を表すことにします。

     \begin{equation*} \begin{split} PQ^2 &= ( (q_0+tw_0) - (p_0+sv_0) )^2\nonumber\\ &+ ( (q_1+tw_1) - (p_1+sv_1) )^2\nonumber\\ &+ ( (q_2+tw_2) - (p_2+sv_2) )^2\nonumber\\ &= ( (0+1s)-(-1+1s) )^2 + ((3+2s)-(1+0s) )^2 + ((2-1s)-(1-1s) )^2 \end{split} \end{equation*}

#点Pと点Qの距離の2乗
PQ2 = ( (q[0]+t*w[0]) - (p[0]+s*v[0]) )**2\
     +( (q[1]+t*w[1]) - (p[1]+s*v[1]) )**2\
     +( (q[2]+t*w[2]) - (p[2]+s*v[2]) )**2

これが最小になるような s, t の組み合わせを見つければよいわけです。数学の問題として具体的に点とベクトルが与えられている場合は、式を整理して平方完成して…という手順です。

しかし、どんな点とベクトルが来ても良いように一般化してプログラムで解くことを目指します。

この式を s, t でそれぞれ偏微分します。

     \begin{equation*} \begin{split} &\frac{\partial PQ^2}{\partial s} = ???\nonumber\\ &\frac{\partial PQ^2}{\partial t} = ??? \end{split} \end{equation*}

#これを偏微分
dPQ2_ds = sympy.diff(PQ2, s)
dPQ2_dt = sympy.diff(PQ2, t)
print('dPQ2/ds = {}'.format(dPQ2_ds))
print('dPQ2/dt = {}'.format(dPQ2_dt))
dPQ2/ds = 4*s - 4*t ・・・①
dPQ2/dt = -4*s + 12*t + 8 ・・・②

さっそく紙とペンでの計算を諦めてしまったわけですが、Pythonはきちんと偏微分してくれました。

ここで、これらの式の意味を考えます。偏導関数①はある s におけるPQ間の距離の増減を意味しており、それは s と t によって変わると言っています。同様に、偏導関数②はある t におけるPQ間の距離の傾きを意味しており、やはり s と t によって変わると言っています。

ここでコーヒーを飲んで空間想像力を発揮させます。直線1上のどこかに点 P を固定して、直線2上を点 Q が左の果てから右の果てへ通過していくことをイメージすると、PQ間の距離は長い~短い~長いと変化します。よってPQは下に凸であり、傾き=0すなわち偏導関数①=0のときに最短となることが想像できます。そして下線の性質は s, t によらず必ず成立します。ただしその地点は s と t によって変わります。これは相手から見た場合にも同じことが言えます。s と t によるが、偏導関数②=0のときに最短距離を迎えます。

これらをあわせると、2つの変数によって変わる2つの偏導関数がともに=0を満たすときに線分PQは最小となります。(証明にはなっていませんが、感覚で攻めていきます。。)

よって、

     \begin{equation*} \begin{split} &\frac{\partial PQ^2}{\partial s} = 0\nonumber\\ &\frac{\partial PQ^2}{\partial t} = 0 \end{split} \end{equation*}

を満たす s, t を見つければよいことがわかります。よく見るとこれらは2元連立1次方程式ですので、中学生が得意とするやつです。

#偏導関数=0を連立方程式として解く
ans = sympy.solve([dPQ2_ds, dPQ2_dt])
print('ans = {}'.format(ans))
s, t = ans[s], ans[t] #ここでs, tは通常の変数に戻る
print('(s, t) = ({}, {})'.format(s, t))

""""
最接近時のs, tが求められた
"""
ans = {s: -1, t: -1}
(s, t) = (-1, -1)

あとは直線1上の点 P に s を、直線2上の点 Q に t を、それぞれ代入してやると最接近点が分かります。最接近距離も式を再利用して求められます。

#それは直線1上のどこなのか
x, y, z = p[0]+s*v[0], p[1]+s*v[1], p[2]+s*v[2]
print('On line 1 : (x, y, z) = ({}, {}, {})'.format(x, y, z))
#それは直線2上のどこなのか
x, y, z = q[0]+t*w[0], q[1]+t*w[1], q[2]+t*w[2]
print('On line 2 : (x, y, z) = ({}, {}, {})'.format(x, y, z))

#最接近距離
PQ2 = ( (q[0]+t*w[0]) - (p[0]+s*v[0]) )**2\
     +( (q[1]+t*w[1]) - (p[1]+s*v[1]) )**2\
     +( (q[2]+t*w[2]) - (p[2]+s*v[2]) )**2
PQ = PQ2**0.5
print('min distance = {}'.format(PQ))
On line 1 : (x, y, z) = (-2, 1, 2)
On line 2 : (x, y, z) = (-1, 1, 3)
min distance = 1.41421356237310

最接近距離は、手計算では√2になるようです。1.41421356237310でも実用上問題ありませんが、この後にいろいろな計算を続けると桁落ちや丸め誤差が出てくるかもしれません。これはプログラミングの宿命であり、手計算をサボった代償なのであります。

最後に、結果を3Dプロットしました。

SNS等でお気軽にご連絡ください

※当ブログに関することは何でもご相談・ご依頼可能です(Servicesになくても)
※TwitterはFF外の場合はDMではなく返信orメンションでお願いしますm(_ _)m

情報発信しています

質問・コメントはSlackやDiscordでお気軽に

勉強会の告知はこちらで

数理モデル / 論理
この記事を書いた人

博士(理学)。専門は免疫細胞、数理モデル、シミュレーション。米国、中国で研究に携わった。遺伝的アルゴリズム信者。物価上昇のため半額弁当とともに絶滅寸前。

この記事をシェアする
Vignette & Clarity(ビネット&クラリティ)
タイトルとURLをコピーしました