※修正日:2019年11月22日
やること
『世界一受けたい授業』という番組で、マンションの空き巣被害について、専門家が次のデータを挙げながら
マンションの空き巣被害がもっとも多いのは3階
と述べた上、「3階以上に住んでいる人は注意してくださいね」といったやり取りがなされました。
へぇ~、3階が一番狙われやすいんだ。と思った視聴者も少なくなかったと思います。というか、このグラフは明らかにそれを伝えようとしています。
データ自体は間違っていないでしょうが、これはあくまで「3階の被害数が多い」ということであって、「3階が狙われやすい」ということではありません。例えば、3階の住宅数が極端に多ければ、当然、3階の被害数は多くなります。 (→中国は日本の10倍の犯罪が起きるから治安が悪い?(そんなリンクはありません))
今回は「マンションの3階は空き巣に狙われやすいのか?」を検証してみます。
マンションの階別住宅数
総務省統計局のデータです。番組が2012年放送なので、一番近い2008年のデータを参照しました。
※狭義のマンションにあたる「共同住宅」の数を用いています。
とりあえず、1階建のマンションが極めてレアである事がわかりました。見たことある方は教えてください、ストリートビューで見学しに行きます。
詳しい方によれば、上のデータは「マンション数×そこに入っている総住宅数」とのことです。例えば3階のバーは、3階建マンションに入っている総住宅数(1~2階も含む)を示しているのだそうです。
このデータを元に「(マンションが何階建かは知らんが)N階に入っている住宅数」を見積もってみます。ついでに、番組と同じ縦軸になるように修正してみました。
※マンションは最大で50階と仮定しました。6, 7階の住宅数はそれぞれ、8~10階の住宅数はそれぞれ、11~14階の住宅数はそれぞれ、15~50階の住宅数はそれぞれ等しいものと仮定しました。
上の階ほど住宅数が少ないということで、大きな間違いはないかと思います。
被害に遭った住宅の階の分布
番組で示されたグラフには「都市防犯研究センター調べ」という注釈が付いていましたが、同センターは現在は存在しないようです。しかし、たぶんこれかな?というデータを見つけたので、グラフを作成してみました。
早速、番組のグラフと重ねてみると、あっさりと「ちょい盛り」の実態が明らかになりました。3階の棒を意図的に伸ばし、対比のために4階と5階の棒を縮めています。バラエティ番組は便所の落書きですから、このくらいのウソは可愛いものです。
さて、このグラフが示すことは、「空き巣の被害に遭った住宅の階の分布」であって、「空き巣の被害に遭いやすい階」ではありません。
N階にある住宅の被害リスク
「ある階の住宅が、他の階と比較してどれくらい被害に遭いやすいか」という期待度合いを出してみます。ここではシンプルに「被害数(赤バー) / 住宅数(水色バー)」を算出します。
※空き巣の被害には100%気がつき警察に届け出るものと仮定しています。
グラフタイトルの日本語がイカれているのは棚に置いておきますが、意外なことに6階の被害リスクがもっとも大きいようです。平たく言えば、住宅数の割に被害数が多いということです。
階によって主要な侵入手口も異なるでしょうから、今後はそういったデータと関連付けて論じたいところです。結論として、いろいろな誤差もあるでしょうが、番組で示されたデータを見て
と解釈するのは甘いと言わざるを得ないでしょう。お茶の間にもっと科学リテラシーを!(ご唱和願います)
まとめ
繰り返しになりますが、独自の仮定をもとに処理しているため、厳密な検証にはなっていません。ここでは「データは疑って見よう」程度に思っていただければ幸いです。